2015年2月4日

新規がん抑制経路の解明

~ RNAによるがん不死化機構の制御機構の解明に成功 ~

 概 要

 鳥取大学(学長:豐島 良太)の大学院医学系研究科遺伝子機能工学部門の久郷裕之教授のグループは、がん化の不死可能に関係しているがん抑制遺伝子を制御する因子としてマイクロRNA-19b (miR-19b)の同定に成功しました。                                       本研究成果が2015年2月3日午前10時(現地時間)の英国Nature Publishing Groupのオンライン科学誌「Scientific Reports」に公開されました。

 研究背景 

 遺伝子の集合体である染色体の末端には、染色体を保護しているテロメア(*用語参照)という部分があります。正常な細胞では分裂のたびに短くなり、やがて細胞は老化し死滅します。しかし、多くのがん細胞では、テロメレース(*用語参照)という酵素が活性化されてしまうためにテロメアの短縮が防がれ、結果的にがん細胞が増え続ける原因になっています。このように、この現象は、がんに認められる形質の一つとして知られています。これまで久郷教授のグループでは、染色体工学技術を利用して、このがん形質を抑制する遺伝子(PITX1)を発見しました。しかし、このがん抑制遺伝子のはたらきは、どのように調節されているのか含めその詳細は明らかになっていませんでした。

細胞には、長さが18〜24塩基程度の短いRNA(マイクロRNA: miRNA)分子が存在しています。最近、このRNA分子は、遺伝子発現の調節を通してがんを含む様々な病気に重要なはたらきをしていることが明らかにされ注目されています。

 研究成果

 久郷裕之教授のグループは、これまでに発見したがん抑制遺伝子PITX1の発現を調節している分子としてmiR-19bがはたらいていることを明らかにしました。細胞内でmiR-19bを過剰に発現させたとき、PITX1のタンパクレベルの低下によるテロメレースの活性化と細胞の増殖能の亢進が認められました。また、このmiR-19bは、PITX1の特定塩基配列を直接標的とし、発現を抑制していることを見出しました。 加えて、悪性黒色腫では、miR-19bの発現亢進とPITX1の発現低下が認められました。 さらに、悪性黒色腫細胞株における miR-19bの発現消失解析では、PITX1の発現上昇に伴ったテロメレース活性および細胞増殖能の低下が認められました。これらの結果から、マイクロRNAががん抑制遺伝子の調節を通してテロメレース活性を制御する分子経路を明らかにしました。

今後の展開

 テロメレースに関わる分子経路の解明は、がんを治すための創薬や早期診断薬などの開発につながります。さらに、テロメレース制御ネットワーク機構の理解から幹細胞(ES細胞、iPS細胞)の維持機構、細胞の老化および不死化、複雑ながん発生の秘密を解き明かす鍵になると期待されます。

<掲載論文>

題名:miR-19b regulates hTERT mRNA expression through targeting PITX1 mRNA in melanoma cells

雑誌名:Scientific Reports (出版社: Nature Publishing Group)

オンラインURL:http://www.nature.com/srep/2015/150203/srep08201/full/srep08201.html

 

お問い合わせ先

■研究内容に関すること

大学院医学系研究科 機能再生医科学専攻

生体機能医工学講座 遺伝子機能工学部門

教授 久郷裕之(くごう ひろゆき)

電話: 0859-38-6208  E-Mail: kugoh@med.tottori-u.ac.jp

 ■取材に関すること

医学部 総務課 広報係

電話: 0859-38-7037

E-Mail: me-kouhou@adm.tottori-u.ac.jp

 ■研究リリース担当

産学・地域連携推進機構 研究推進部門 長島 正明

電話: 0857-31-6716

E-Mail: info@ml.cjrd.tottori-u.ac.jp

 

<参考図>

kugouリリース

 <用語解説>

テロメアおよびテロメレース

染色体の末端に存在するテロメアは、真核生物の染色体が正常に機能するために必要不可欠な構造体の一つである。脊椎動物のテロメアは、(TTAGGG)nの繰り返し配列をもち、直鎖状DNAの両端にヒトではおよそ10〜15Kb、マウスでは、25〜40Kb存在している。正常細胞内の染色体の末端に存在しているテロメアは細胞分裂に伴って「末端複製問題」により短縮することから、細胞の寿命を規定する“分子時計”としての働きをもっています。一方、がん細胞のテロメアは、テロメレースという酵素のはたらきで維持されることにより不死化能を獲得しています。

 

 リリース記事(2015.2.4)

参考:共同通信PRワイヤーページ http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201501287216/